●『NYから帰ってきちゃった』その3 ステナイデ4号掲載

さて、ニューヨークから帰って来ちゃったシリーズもそろそろ終わりが近づいてきました。さいごに、なんでNYから帰って来ちゃったのか、そのワケをお話ししたいと思います。

NYでのお仕事も順調、仲間もふえ、このままここで骨を埋めるかあ?みたいな順風満帆な日々だったのですが、表現者のサガと申しましょうか、それとも根っからの放浪者なのでしょうか、あのシゲキ的な街ニューヨークにいても、あろうことか毎日が退屈になってきてしまったのです...。

ジャズのコンサートも見ました。ミュージカルも見ました。オペラにも行きました。そしておいしいレストランにも通いました。いわゆる現代のエンターテイメントはほぼ制覇、ご満喫。さて、その次は?とふと考える。そっから先が見つからない。え〜っ、これで終わりイ?と、まるで前菜をたらふく食って、さあメインディッシュに...というときに「ハイ、これでおしまい」と突然オーダーストップ、そんな状況に自らが陥ってしまったのです。

さあ、それからが大変。いままで外からやって来るシゲキを楽しませてもらっていたのに、もうやって来ない。やって来てもつまらない。これは西洋の「受け身的お遊び」からそろそろ卒業しろというメッセージなのか、否か...。だんだん私の視点はゴテゴテとした表ばっかりの誰が見ても美しいとわかるような西洋的表現でなく、ぱっと目にはわからないが、じっくり見るととんでもなく奥深い、いぶし銀のような日本の文化にたいして、興味が移り始めたのです。果たしてメインディッシュはこれ?

つくしさんは、秋の公園でハラハラと舞い落ちる落ち葉のバックに広がる青いお空をぼーっと見つめながら、「日本にかえろっかなあ〜」と独り言をいいました。

一口に帰国と申しましても、そう簡単にはいかないものです。引っ越しの準備や仕事関係の人たちとの付き合い、なんやかんやの大変な手間。

でも一番心配なのは、帰国後の日本でのお仕事。色々考えると帰りたいのに帰れない心のせめぎ合いが始まるのです。「仕事あるかな??」そうやって日本に帰れなくなってしまってずるずるとニューヨークで暮らす日本人もたくさん。ここだけの話、「いちおー、ニューヨークにいりゃ、ハクがつくってもんで、仕事があろうがなかろうが、いるだけでかっこいーってもんだぜえ」と思い込んでいる日本人ニューヨーカーも多いんです。帰るのって勇気がいるんですよ...。

わたしゃあ、そんな仲間にはなりたくはない。日本で仕事が見つかろうが見つかるまいが、自分の国じゃあ、なんとでもなる。ええい、帰ってしまえ。あとは野となれ山となれだあ!・・・と、8年前にニューヨークにやって来た時と同じ、コネなし、アポなし、すっからかんで、またまた古巣に帰って来たのです。

帰ってみれば、私はまるで浦島太郎、いや浦島花子。700年も先に進んでいた日本と出くわしたのであります。私がニューヨークでたいやひらめの舞い踊りにうつつをぬかしている間に、日本はこんなにも進んでいたのね...。

思い起こせばあの秋の日。ふと帰国を決意してから一年たちました。同じ青空を眺めている今の私の居場所は、目の前を小川が流れる山の中。大自然の懐に抱かれながら、さて次の表現に着手いたしましょうか。

●『ニッポン癒し天国』

●『ニッポン不安天国』

●『ニッポン祭り天国』

●『NYから帰ってきちゃった』その1

●『NYから帰ってきちゃった』その2

●『NYから帰ってきちゃった』その3

●『ニッポンジン、総お殿様状態』その1

●『ニッポンジン、総お殿様状態』その2

●『ニューヨークの陶芸教室』

●『ニューヨークのスカンク』

●『ニューヨークのゴボウ』

●『オハイオの田舎娘』

●『ほめちぎるアメリカ』

●『アメリカ人は猫舌?』

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