土の上に裸足で立ってみる。
芽吹き始めた小さな草たちが、私の足の裏をくすぐる。小石や落ち葉が適度な刺激となって、これがほんとのケンコーサンダル。大地のエネルギーが足から入ってきて全身に広がる感じ。く〜、たまらん。
パソコンと一日中にらめっこしたあとのこの儀式は、私にとってサイコーの癒しのひととき。体中にたまった磁気を大地が吸い取ってくれる。私は手もついて四つん這いになり、こう叫ぶ。「ほうで〜ん(放電)!」
なんだかんだいってこんなに文明が発達したところで、結局人間はいつまでも自然にくっついてないと生きられないのよね。
ニューヨーク生活が8年近くも続けられたのも、アパートの近くにあった4つのほったらかしの雑木林みたいな『公園』のおかげだった。大地に寝そべってベーグルを食べたり、すごく大きなヨーロッパブナの木に抱きついてグチを聞いてもらってめそめそしたり、よもぎの葉っぱを見つけて、よもぎ餅作ったり・ゴミだらけでガラスの破片だらけのニューヨークの公園だったけど、ゴミとゴミのあいだにも木や草は生えているのです。そのたくましい姿に感動し尊敬して、公園でコロコロ遊んでいたのです。
そんな私の姿を横目でじーっと見るアメリカ人たち。口を開けば「あんた、汚いから触っちゃダメよ。ウィルスがいるわよ」とか「病気になるわよ」とか言って木一つ、触りもしない。汚いベンチに座り、自分はコーラとアイスクリームとポテトチップをガンガン食う。どっちが身体に悪いんじゃ。
最近、近所でへんなおじさんに出会った。何でも自分は『世界一の野草の料理人』なのだそう。そのおじさんにノカンゾウなる草を教えてもらった。これが今の時期若葉が生えていてすこぶるうまいのだそうだ。よく見るとうちの庭にアホほど生えている
やつではないか。去年あまりの群生に困っていた代物だ。それが食える。しかもうまいときている。し、知らなかった・・・。
さっそく採集してノカンゾウカルボナーラを作る。う、うまい・・・! 余ったやつをヌタにしてみる。こりゃまたうまい!こうなりゃ何でも使えるってんで、ピザにも入れたし、焼きそばにも入れた。全部、成功。
『月の癒し』という本に書いてあった。人間できるだけ自分の住んでいる近くのものを食べるのが健康にいいのだそうだ。その土地で繁茂するものには、すべてその土地の人たちが身を守り、育つために必要なあらゆる栄養素がふくまれているという。野菜は、もともと野草から人間が品種改良して変えていったもの。そのオリジナルが食べられる。しかも自分ちの庭に生えているのだからタダ。
かの弘法大師さんもおっしゃっていた。「家の庭先を見れば、その家の住人の健康状態がわかる」たとえば心臓が悪いと、自然と心臓にいい草が生えてくるのだそうで、植物はその住人にあわせて草を変えて生やすのだ。だから庭先のものを食べるということが一番身体にいいということになる。
そんならあなた、それを食べない手はない。テレビで、どこかの島のフルーツが身体にいいとか、どこかの国の菌が心(?)にいいとか聞いては、高いお金を出して、あっちふらふらこっちふらふらと情報に振り回されている、そこのあなた。ブームが過ぎ去ったら忘れちゃうんでしょ?
そろそろ足もとを見てみましょう。ほら、今あなたの立っているその地面に何か咲いていませんか? それがあなたを本当に癒してくれるものなのかもしれませんよ。
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